三浦しをんの直木賞受賞後の第一作。
竹青荘に住む10人が、箱根駅伝を目指すと言う青春小説だ。
寛政大学四年生の清瀬灰二ことハイジが、ある晩に万引きをして逃げている蔵原走と出会った所から物語がスタートする。
実は寛政大学陸上部の宿舎だった竹青荘に10人揃った瞬間でもあった。
とは言え、陸上経験者はハイジと走を含め3人のみ。
漫画のような展開(小説なのだが)で、「ありえねー」と感じる。
しかし読み進むにつれて、「もしかすると、現実にあるかも知れない」と思ってくるから不思議、
著者の力量が並ではない。
10人のキャラクター分けが素晴らしく良い。
高校で実力はあるが人間関係が元で陸上を捨てた「走」は、スポーツものの基本、
絶対に走れるわけがない漫画オタク 「王子」や国費留学生の黒人「ムサ」、
既に司法試験合格済みの「ユキ」、双子の兄弟「ジョータ」「ジョージ」、
タバコ大好き「ニコチャン」、就職活動につられたクイズ大好き「キング」、
山の中からやってきた「神童」
そしてこの面子をまとめ、走力も抜群「ハイジ」。
このハイジの監督力が素人軍団をぐいぐいと、しかし規律だけで縛るのではなく
メンバーの良さを引き出して、本物の駅伝チームに作り変えるのであった。
500ページを超える長編の残り200ページは、箱根駅伝シーン。
箱根駅伝自体ドラマ満載なので、当たり前と言えば当たり前だが、面白い。
一度読み始めたらノンストップ。
走るとは一人の作業で、20KMも走れば自分と向き合わざるを得ない。
各区間の走りの中で、メンバーは自分と向き合う、その描写が小説にマッチしてしていた。
このレース展開も本当にあったんじゃないかというほどの内容。
ハイジと走のBLチックな友情からすると、9区→10区の襷リレーが実はクライマックスか?
と思ったが、やっぱり大手前読売新聞社前のラストシーンはわかっていてもぐっときた。
単行本の表紙が各区間の選手を描いていて、読後の楽しみになっているのも、いとよろし。
一級のエンターテイメント小説であった。
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