立川談春 25周年記念独演会 2

「紺屋高尾」
中入りのあと、大ネタの紺屋高尾に。昨年末のフェスティバルホームでは、「芝浜」をかけたみたいだが、大阪でも本気で客を掴みにきたのか?はたまたこれくらいは余裕か?

紺屋の小僧 久蔵は、吉原三浦屋の高尾太夫に一目惚れ。
周りが止めるのを聞かずに、3年掛けてお金を貯めて、念願の高尾太夫と対面を果たす。
正体は明かさないつもりだったが、「次はいつ?」との問い掛けに全てを明かす。
その正直さと自分への想いを受け止め、年季明けの翌年3月15日に妻にして欲しいと伝え、
久蔵を送り出した。
翌年3月15日に晴れて夫婦になった二人は、紺屋を営み、幸せに暮らしたという人情話。

二葉亭四迷が、I LOVE YOUをあなたと死んでも構わないと訳したと、短いマクラから入った時、
談春がどんな「紺屋高尾」を聞かせてくれるのか、と楽しみだった。
果たして、感動した。想像以上だった。

他で聞いたのと違った解釈がされていた。よりリアリティーを持たせるように工夫が見られた。

例えば
・高尾太夫に惚れたのは、錦絵ではなく、吉原で一目惚れした。

・導入部が、久蔵が恋煩いで倒れている場面からではなく、久蔵が高尾太夫と結婚をするので、
一緒に来てくれという場面から。
久蔵の思いが荒唐無稽だと強調された。
しかも、高尾太夫は会って話せば気持ちをわかってくれると、久蔵の純情さがわかり、
後半に気持ちを打ち明ける土台となった。

・恋煩いで倒れてた久蔵に対して、高尾太夫に会うためには15両必要と
旦那に言わせたのが奥さんだった。
働いているうちに、他の女を好きになると、現実的な判断を行えるのは女性ではないか。

・吉原のしきたりを知り抜いた破井竹庵先生が無理を言うから、
上客だと三浦屋も判断したという説明を加えることで、リアリティーを増した。

・吉原に行く準備は久蔵が自分で風呂に行くのではなく、
周りの皆が協力して醤油屋の若旦那に仕上げたこと。

・紺色に染まった指は、若旦那ではありえないので、隠し続けた。
本当の正体を明かした後で、嘘をついていないかと高尾太夫に問われた際に証拠になった。
更に結婚後に高尾まで指先を真っ青にして働いたという、所まで繋がった。


一生懸命に高尾太夫に思いを告げる場面や時を告げるカラスが鳴かないで欲しいと
高尾太夫を見つめる久蔵が、切なく感動的だった。
こんなに思われたら、女冥利に尽きるのではないか。

最後の方で2回程噛んでしまったのがちょっと残念だったが、
他の噺家では「紺屋高尾」は面白いと思えないのではないか。そんな良い落語を聞かせてもらった。

コメント