「子別れ」 立川談春独演会


2011年3月27日(日)14:00~17:00 堺市民会館大ホール。

挨拶に堺市長が来ていて、選挙前か?と思ったら、そうではなく大ホールで
1年間掛けて開催していた「ラブ・サウンズコンサート2010」の最終日だった。
出演者は何気に豪華だ。

東京では停電などの影響で、落語会が延期・中止になっているのもあるようで、
東北・関東大震災の影響をマクラで触れにくそうに少し触れて、
前座話として「粗忽の使者」を一席。

これは初めて聞く話だった。
粗忽者で有名な地武太治右衛門。殿に命じられて、使者として赤井家に使いに行ったのは良いが、
口上を忘れる始末。「切腹」を「一服」と言ったり、自分の名前は忘れるし、
大ボケをかましまくる。

忘れた口上は、尻をつねられた痛みで思い出すかもと、尻をつねらせるが、
つねられ慣れており固くて全く痛がらない。 それをこっそり観ていた大工が、
くぎ抜きで尻をつねってやると部屋に乗り込んでつねるとさすがのお尻も悲鳴を上げる。
ようやく思い出したのは、「口上を聞いてくるのを忘れた」

「子別れ」
上中下に別れるこの話、師匠の談志は下だけを中々やらなかったらしい。
10年ほど前からようやくやるようになった「子別れ」。
ある時談志と2人でいると、子別れは40年かけてやっと完成した、
うちの弟子は誰も子別れやりたいと言わない、という話になり、
その場で師匠が長年かけて完成させた話をおいそれをやりたいとは言えない、
と思い切って伝えたら、やってくれるか、と師匠の許可が下りた。

ここまではいい話なのだが、その後子別れを掛けた際に、客の一人が談志に、
談春の子別れがとっても良いと耳打ちしたら、
談春が子別れをぱくった、あいつは破門だ!と切れたらしい。
師匠が弟子に伝えていくのが落語のはずだが、さすが立川流。
しかし、お前にやってくれと言ったことを思い出した、
と談志から電話があって一件落着。

今まで聞いたことがなかった上は、弔いに出かけた後、吉原に3日間しけこんだ後で、家に帰宅。
どこで何をしてたと妻に問い詰められ、しゃべらなくても良いのに、
昔からつながりのあった花魁とばったり店で再開したことを話してしまい、
妻にねちねち攻められると、酒に酔った勢いもあり、逆切れして嫁・子供を叩き出した、最低な話。
休憩を挟んで、所謂「子は鎹」に入った。
師匠談志は、いくつかの工夫を挟んだとのこと。

恐らく
・息子の亀との再会場面。仕事をくれたある商家の番頭さんと
移動中に長屋から飛び出てきた亀とぶつかる。 番頭さんが気を利かせて、亀との時間を作ってあげる際に 「神様がいるとは思わないか」と諭す。

・亀は絵を描くのが大好き。特に青色の鉛筆で空を書きたいという。
もらった50銭の小遣いで鉛筆を買って家に帰ったので、
母親に父親に会って小遣いをもらったことを白状させられてしまう。

・普請中の屋根の上で肩車をされて見上げた青空が感動的で 青色が好きになった亀。
小遣いで買った青色鉛筆で書いた空を持っていくのを忘れたので
元旦那に会いたくても会いたいと言えなかった奥さんは、
亀と会っている鰻やに行く決心をつけた。

亀が8歳足らずだが、男女の機微にも通じており、父母のキューピット役にぴったり。
お互いに後添えがいるかどうか知りたいのに聞けない微妙な空気をおちょくったり、
鰻屋の2階で二人っきりにするのにお茶を汲みに行ったり、笑わせるポイントもたくさん。

良い楽しめる会だった。

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