談春独演会 2012年12月@森ノ宮ピロティ

 大阪・神戸で12ヶ月連続の独演会も、ついに楽日を迎えた。 




今月亡くなった中村勘三郎さんとの思い出話でスタート。

「赤めだか」を気に入ってもらい、会うようになったこと。
 (仮名手本?)忠臣蔵の舞台中、切腹したら出番が終わるから、
鑑賞ついでにと、対談が設定された。

しかし、観客や仕出弁当屋も途中入場できない四段目の途中、出番が終わった勘三郎さんを
待たせてはならぬと、決死の覚悟で途中退場した話など、
意外な関係性を披露。

「六尺棒」

放蕩息子が、遊んで夜中に帰ってくると、家は父親によって締められており、
謝っても、もう勘当だと入れてくれない。

他人に家を取られるくらいなら、燃やしてやると、火付けする息子。
何をするんだ、と手元にあった六尺棒を手に息子を追いかけまわした。

父親をやり過ごし、がら空きの家に入り、逆に父親を締め出した。

家に帰り締め出されたとわかった父親。
「そこまで真似るなら、六尺棒を持って追いかけて来い」がサゲ。

一席目は、いかにも落語らしい落語といった噺だった。


「富久」

幇間の久蔵は、酒でいろいろな旦那の仕事をしくじっていた。
ある時、「松の1111番」の富くじを買い、家の神棚に祀り、寝入った。

夜中、しくじった旦那の家の付近が火事だと起こされ、
駆けつけたことで、再度出入りを許された。

火事見舞い客の相手をし、酒を頂き寝ると、今度は自分の家が火事になり、
失ってしまう。

旦那の家で養ってもらうが、真面目な商家になじめない久蔵。
富くじを買っていたことを思い出し、当日寺に行くと、見事に千両が当たる。

しかし、札がないと賞金を受け取ることができない。
千両と言わず、半分でも、一割でもいいから受け取りたい、
借金を返して家を建てたい、という叫びが痛い。

失意のどん底に沈む久蔵だったが、鳶の頭が火事場から、
神棚を持ち出してくれており、無事札を手にすることができた。

この千両でどうすると言われた久蔵、
「これでご近所のお祓い(払い)をします」というサゲ。

酒で失敗するも憎めない久蔵に幸せになってもらいたいという
周囲の気遣いが暖かい。

ジェットコースターに乗ってるような久蔵の身の上だが、
年末にぴったりのハッピーエンドな噺だった。


1年間続いた独演会を締めくくるように、会場全員の三本締め(東京版)で終了した。


勘三郎さんに「これからは思ってるように上手くいかない」と言われたそう。
「気になる人には会っておいた方がいい」という談春師匠の言葉が印象的だった。

1年間を通じて、4回 計8席の噺を聞いたが、4月の「慶安太平記」が一番好きだった。
落語というより、映画のようなスピード感、毎月の独演会だからこそのネタであった。
もう生で聞くことはないんだろうなあ。


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