2014/05/25

鎌倉の仏像 ~ 迫真とエキゾチシズム~ @奈良国立博物館

奈良国立博物館で鎌倉の仏像展をやっているとネットで見かけ、
空き時間ができたので、足を運んだ。

特別展 武家のみやこ 鎌倉の仏像 迫真とエキゾチシズム
2014年4月5日(土) ~ 6月1日(日)
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2014toku/kamakura/kamakura_index.html


一般 ¥1,300

一度だけ鎌倉に行ったことがあるが、奈良よりも厳格というか固い雰囲気を感じたのだが、
果たして仏像に違いがあるのか興味深かった。

鎌倉の仏像は、中国・宗の影響を受けているとのこと。
正直、どれが?という感じもしたが、閻魔大王のイメージを彷彿とさせる
初江王座像(円応寺)や伽藍神像などは、奈良・京都で見たことがない。

肖像彫刻も鎌倉時代の特徴かも。

逆にパンフレットや公式HPの説明によると、奈良と鎌倉の共通点がある。

鎌倉時代初め、康慶・運慶・快慶ら慶派仏師の手によって、
奈良に新しい仏像様式が生まれたとのこと。
(平家に焼き討ちされた奈良の仏像復興は、彼ら慶派の仏師によるもの。
東大寺も1150年焼き討ちに会うが、源頼朝の協力を得て、
1185年に後白河法皇を導師として「大仏開眼供養」が行なわれた)


転害門を通って奈良国立博物館に歩いていく途中、東大寺南大門を
通ったが、彩色の剥がれ具合にどれほどの時間が流れたのだろうか、と
大きさも去ることながら圧倒され、しばらく見上げていた。


2014/05/18

走る 箱根駅伝 5区・6区


箱根行きの目的として、歌麿の「深川の雪」と共に、箱根駅伝の5区・6区を
一度見てみたいということがあった。
単行本しか持ってなかったので、新たに買った「風が強く吹いている」の文庫本を鞄に詰め込んで。

1日目は小湧谷からバスを乗り換えて、大湧谷に行くことにしたので、
箱根湯本駅から箱根登山バスに乗り込んだ。

5区のコースとしては、箱根湯本駅はすでに登り始めている。
川沿いの山道をエンジンが唸りを上げてバスが登って行く。

函嶺洞門、大平台のヘヤピンカーブ、宮ノ下 富士屋ホテルと、お馴染みのポイントを
通過し、渋滞することもなく小湧谷バス停に到着。


小湧園前 5区 14.1km地点

箱根湯本駅前から、約500mの高低差、
テレビで見てても感じることだが、よくこんな山道を走るもんだ。
小湧園前の坂道を歩くだけでも、前傾姿勢になってしまう。

ロードバイクで登っている人が結構いたけど、ツール・ド・フランスの山岳ステージを
彷彿とさせる風景だった。

5区のコースはこの後、恵明学園前、国道1号最高地点(標高 878m)、箱根神社の大鳥居を
くぐり、芦ノ湖のゴールに到着する。 

ゴール!


現在の5区 23.4kmに変更後の区間記録は、
東洋大 柏原選手 1時間16分39秒 (2012年 第88回大会)。 


芦ノ湖湖畔のホテルに宿泊し、2日目は岡田美術館がある小湧谷まで
箱根登山バスで登って下る。


6区のスタート風景
箱根関所南の交差点を左に折れ
まず国道1号最高地点まで登る

箱根関所南から1号線に出た所
6区のランナーが見る景色
登り坂がきついという事は、下り坂も急ということは自明の理。
しかし、国道1号最高地点を過ぎると、落ちていくかというような急な坂。
積雪してたり、凍ってたら危険すぎる。


今回バスで登り下りしただけだが、小説「風が強く吹いている」の一番の見せ場が、
9区→10区の走→ハイジへの襷リレーや10区ゴールではなく、
実は6区だったのではないかと強く感じた。

5区ランナー・神童は体調を崩し、高熱・脱水症状でフラフラになりながらもタスキはつないだが、
18位に順位を落とした復路。

6区は、学生時代に司法試験に合格した秀才・ユキ。
神童とは違い、ゾーンに入った走りで、雪が積もっている中で、区間2位の走りを見せる。

ちょっと長いけれど、下記引用。

『 道端の杉の枝が、真っ白な雪を載せて重そうにしなっている。
幹は黒く濡れ、山は一晩のうちに、単色のうつくしい世界に変わっていた。
それらの風景は目の端に映ったとたんに、後方へ流れる。映画のフィルムよりも速く、
なめらかに。

そうか、これはふだん、走が体感している世界だ。ユキは胸が詰まる思いがした。
走、おまえはずいぶん、さびしい場所にいるんだね。風の音がうるさいほどに耳もとで鳴り、
あらゆる気色が一瞬で過ぎ去っていく。もう二度と走りをやめたくないと思うほど心地いいけれど、
たった一人で味わうしかない世界に。
走が、ときに行き過ぎたと思えるほど走りに没頭する理由を、ユキははじめて理解できた気がした。
こんな速度で走ることを許されたら、たしかに中毒のように耽溺してしまう。
もっと速く、もっとうつくしい瞬間の世界を見てみたい、と。それはたぶん、永遠にも似た
一瞬の体感なのだ。だが、危うすぎる。生身の肉体で挑むにはあまりにも過酷な、
うつくしすぎる世界だ。(中略)

だけど最初で最後に、このスピードを味わえてよかった。山道を疾走しながら、
ユキはうっすらと笑みを浮かべた。走、あまり遠すぎるところへ行くな。
おまえが目指しているのはたしかにうつくしい場所だけれど、さびしくて静かだ。
生きた人間には、ふさわしくないほどに。
(風が強く吹いている 新潮文庫 P.529 ~ P.530) 』


高校の陸上部時代、監督や仲間に、走ること・価値観を理解されず、一度は陸上を諦めた走。
ハイジだけが、走の過去・気持ちをわかっていたのかと思っていたが、
箱根の山下りで、ユキは走とシンクロしていたんだ。

しかも、行きすぎるな、帰ってこい、とまで。

新潮文庫の解説で、最相葉月がこう書いている。

『人には、なんのためとか、誰のためといった目的の定かでない行為を無性に必要と
するときがある。』

箱根に行って見て、その通りだと感じた。
こんな坂を何故登るんだという問いは、意味がなく、必要ない。

速くて、強くて、美しいランナーの姿を見ていきたい。


6区→7区 小田原中継所
6区 20.8km 
区間記録 58分11秒 
駒澤大 千葉選手 2011年 87回大会 


2014/05/06

深川の雪@箱根 岡田美術館

5月5日子どもの日、箱根 岡田美術館に出かけた。

喜多川歌麿の肉筆画「雪月花」三部作の「深川の雪」が、60数年ぶりに再発見され、
岡田美術館で6月30日まで展示中。
http://www.okada-museum.com/exhibition/

ゴールデンウィーク真っ只中ではあるが、見逃したくなかったので、
箱根初訪問となった。


2013年10月に小涌谷に開館した
岡田美術館

携帯電話や飲み物はロッカーに預け、空港のセキュリティーチェック張りに
X線チェックを受け入場、展示されている2階へ。

薄暗く広い2F 陶磁器展示室に足を踏み入れると、「深川の雪」が目に飛び込んでくる。
遠くからでもわかる大きさと色鮮やかさ。

縦 199cm  横 341cm 、浮世絵でこんなに大きいのは初めて見た。
誰が発注し、どこに飾ろうとしたんだろう。

深川の料亭、総勢27名の芸者、女中が描かれており、
着物の柄・色彩の鮮やかさは、最近描かれたと言われても信じるくらいだ。

猫にじゃれられて振り返る芸者、手鏡で紅をチェックする芸者、拳で遊ぶ芸者たち、
夜具や料理を運ぶ女中など、どこを見ようか目移りしてしまう。

歌麿晩年の大作、良い作品を見ることができた。



足湯カフェから、福井江太郎氏の壁画
「風・刻(かぜ・とき」を。


若冲や琳派絵師の作品、中国・韓国の陶磁器など、他にも見るべき作品に溢れていた
岡田美術館。

入場料が、2,800円とお高めだが、その価値はありました。


2014/05/02

2014年4月の映画

4月の鑑賞メーター
観たビデオの数:5本
観た鑑賞時間:583分

テルマエ・ロマエ 通常盤 [DVD]テルマエ・ロマエ 通常盤 [DVD]
地上波録画。日本の風呂とのカルチャーギャップでもっと押して欲しかった。
鑑賞日:04月29日 監督:武内英樹




ミート・ザ・ペアレンツ2 スペシャル・エディション [DVD]ミート・ザ・ペアレンツ2 スペシャル・エディション [DVD]
ジャカルタ→香港 フライト。2だと知らずに観賞(Meet the fuckers)。
ベン スティラー、ロバート デ・ニーロ、ダスティンホフマンと豪華ドタバタコメディ。
デ・ニーロとホフマンのアメフトシーン、マッチアップが貴重な気が。
鑑賞日:04月18日 監督:ジェイ・ローチ



バベル スタンダードエディション [DVD]バベル スタンダードエディション [DVD]
CS録画。神の怒りに触れ、言語をバラバラにされた人類。違う言語、
言葉が話せないだけでなく、同じ言語を話そうとも、家族であろうとも伝わらない、
コミュニケーションが成立しないことをひしひしと感じる内容。
全編で、わかってもらえないもどかしさに苛まれる。菊池凛子の存在感が半端ない。
鑑賞日:04月13日 監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ


トリック劇場版 ラストステージ 超完全版(本編Blu-ray&特典Blu-ray2枚組)トリック劇場版 ラストステージ 超完全版(本編Blu-ray&特典Blu-ray2枚組)
KIX→香港のフライト。時間つぶしと見始めたが、「ラスト」の題名通りの展開。
最初から追いかけていたら、感動してたかも。
鑑賞日:04月10日 監督:堤幸彦



幸福のスイッチ [DVD]幸福のスイッチ [DVD]
BS録画。家族より仕事を大切にする父を理解できずに距離をおいていた次女。
実家の電気屋を手伝ううちに父の想いをに通じるようになるとは言え、
次女のツンツン度合いが一本調子なのが気にかかった。
沢田研二が良かったな。鳥のさえずりにほっこりした。
鑑賞日:04月06日 監督:安田真奈


鑑賞メーター

2014/05/01

2014年4月の読書

2014年4月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:4302ページ
ナイス数:123ナイス

読み解き「般若心経」読み解き「般若心経」感想
詩人ならではのお経の現代語訳。お経が美しいという境地に至ったことはないが、両親の介護や家族との関係という身近な距離感からお経を捉えているのは、見習いたい。
読了日:4月30日 著者:伊藤比呂美







箱根駅伝 (幻冬舎新書)箱根駅伝 (幻冬舎新書)感想
2011年早稲田大 優勝後の本。駒澤、東洋、早稲田監督の一問一答で、各大学の戦略が伺いしれて興味深い。駅伝重視でマラソンが弱くなったと言われているが、箱根はついでに走ったとい言う瀬古さんのような思考スケール(もちろん実力も)の選手が出てこないかなあ。
読了日:4月29日 著者:生島淳







ハル (WIT NOVEL)ハル (WIT NOVEL)感想
アニメ映画のノベライズ版。著者には珍しく、どんでん返しが。牧原監督との次回作品を期待したい。
読了日:4月29日 著者:木皿泉








想像ラジオ想像ラジオ感想
生と死の狭間を繋ぐDJアークの語り。自分の死後ってどんな世界だろう。想像しろ。想ー像ーラジオ―、のジングルが胸の中を駆け巡る。
読了日:4月27日 著者:いとうせいこう








二度寝で番茶 (双葉文庫)二度寝で番茶 (双葉文庫)感想
文句なく面白い。小説でもエッセイ読んでも安心の木皿ワールド。核家族なんて誰かが最近作ったもの、どうしてもイヤだったら、捨てても構わない、とか、らしいよね。
読了日:4月26日 著者:木皿泉








ジェトロセンサー 2014年 05月号 [雑誌]ジェトロセンサー 2014年 05月号 [雑誌]感想
米国でつくる 回帰は本物! 第23回アジア主要33都市・地域の投資コスト比較
読了日:4月25日 著者:









放射線のひみつ放射線のひみつ感想
言葉と単位を基礎から押さえることができ、入門書として最適。著者の「がんのひみつ」も合わせて読み、癌についても勉強しておくことで、適切なリスクヘッジも取れるのではないか。
読了日:4月23日 著者:中川恵一







誰が誰に何を言ってるの?誰が誰に何を言ってるの?感想
全ての戦争は、自衛の意識から始まる。実際の犯罪認知件数と体感治安の差はどこから来るのか。数字に当たる、主語を「みんな」ではなく「自分」にして、物を見る・考える・実行することが求められることを感じた。
読了日:4月22日 著者:森達也







盤上のアルファ盤上のアルファ感想
あまり詳しく書いても、将棋を知らない人が離れていくし、逆点勝ちを描くにはある程度書き込まないと説得力に欠ける。難しいけど、結構楽しんで読んだ。
読了日:4月20日 著者:塩田武士








風の谷のあの人と結婚する方法風の谷のあの人と結婚する方法感想
題名だけで読んでみたけど、その方法はわからず。著者ってこんな本も書いているのか。
読了日:4月20日 著者:須藤元気








IWGPコンプリートガイドIWGPコンプリートガイド感想
2012年12月発行のガイドブック。辻村深月との対談あり。マコトの好きな音楽を聞きながら読んでみたいと思ってたので、音楽ライブラリーは有難い。
読了日:4月19日 著者:石田衣良








「反原発」の不都合な真実 (新潮新書)「反原発」の不都合な真実 (新潮新書)感想
テレビや周りが唱えているから脱原発、というような感情論を排して、議論をスタートさせるために。とは言うものの、反対派の人たちはこの本だけでは納得できないだろう。
読了日:4月18日 著者:藤沢数希








乱反射 (朝日文庫)乱反射 (朝日文庫)感想
殺意のない「オリエント急行殺人事件」か。ある2歳の子供の事故死は、誰もがやってしまう日常的なモラル違反が積み重なった結果とも言えた。正直、どんな原因で近親者を亡くしても、納得のいく理由などないだろう。しかし、この小説の主人公の立場に立たされたら、気持ちの整理なんてつけられないだろうなあ。主人公夫妻に幸あれ。
読了日:4月18日 著者:貫井徳郎





日本辺境論 (新潮新書)日本辺境論 (新潮新書)感想
冊封体制の端、辺境の地 日本・日本人の思考の土台を引用を中心に論じる。世界標準を追いつくことはすれ、標準は作らない。「こんにゃく問答」を引いて論じた師匠と弟子の学びについては、面白い。日本人は、「きょろきょろ」とは、言いえて妙だ。
読了日:4月13日 著者:内田樹








困った人体困った人体感想
章名が体の臓器や部位のエッセイ。著者独特の観点、よくこれだけネタがあるものだ。腰を痛めないように重たい物を持つ時に、腰への挨拶してみようかな。
読了日:4月8日 著者:赤瀬川原平








聖地巡礼 ビギニング聖地巡礼 ビギニング感想
その土地、その場、その空間が持つ特有の宗教性を褒めたたえながら歩くこと。京都/鳥辺野は読んでいても、伝わってくるものがあったけど、本で読むのではなく、現場へ行き共鳴しなければわからないだろうな。大谷本廟、三輪山に行ってみたくなった。
読了日:4月8日 著者:内田樹,釈徹宗






ぼくの絵本じゃあにぃ (NHK出版新書 429)ぼくの絵本じゃあにぃ (NHK出版新書 429)感想
著者の絵本の書き方、震災後の取り組み。風景を主人公にした絵本作りが、被災地を回るなかで実になったのが、「あさになってのでまどをあけますよ」。「わらうほし」読んで見よう。
読了日:4月5日 著者:荒井良二








ジェトロセンサー 2014年 04月号 [雑誌]ジェトロセンサー 2014年 04月号 [雑誌]感想
メキシコ経済展望 輸出と内需の両輪は回るか 特別リポート 潮目が変化 ジェトロアンケートに見る日本企業の海外事業展開
読了日:4月2日 著者:








理系の子―高校生科学オリンピックの青春理系の子―高校生科学オリンピックの青春感想
インテル国際学生科学フェア2009年大会の出場者を取材。めちゃくちゃ面白い。高校生とは思えない高いレベルの研究内容もさることながら、核融合炉を作った少年・デュポン社城下町でデュポン社に挑戦した少女など、どの章も実にドラマチックだ。共通しているのは、研究に打ち込む熱意。 「科学というのは、白衣を着て、まわりくどい言い回しを駆使することではないんです。わたしにとって科学とは、研究をし、それをほんとうに必要としている人に届けることです」
読了日:4月2日 著者:ジュディダットン



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