「百年目」 桂米朝

特選!!米朝落語全集第六集

「人を育てる」がテーマ。ある商家の番頭さん、仕事熱心で遊びのあの字も知らない堅物で通っている。旦那からの信用も厚く、丁稚たちの教育も任されている。

ある日朝帰りした丁稚にお説教を食らわせ得意先周りに出掛けた。
しかしこれはうそで芸者を引き連れ舟遊び、桜ノ宮に花見に来たのだった。

素面のうちは顔がささないように障子を閉め切っていたが、酔うにつれて大胆になり、ついには岸に上がりあっちふらふらこっちふらふら、大騒ぎ。
間の悪いこともあるもので、花見に来ていた旦那とばったり会ってしまう。
酔いもさめ一気に素面に、平謝りで店に戻った。
いつ旦那から暇を出されるかと一晩を過ごし、翌朝ついにお呼びが掛かった。

意に反して旦那からはやさしい言葉を掛けられた。
桜ノ宮で会った時に、何故永らくご無沙汰しておりますと聞いたのかと、最後に旦那から問われる。
あんな所を見られたので、これは百年目と思いましたと言うのがサゲ。

素面の番頭、酔っぱらいの番頭、桜ノ宮で旦那とぶつかった番頭の変わり具合が面白い。
旦那が番頭に対して丁稚の教育の大事さ難しさを語る場面、番頭の語源を語り店がしっかりするためには、旦那と番頭の関係・番頭と丁稚の関係が大事と説く場面、遊ぶときには遊ばなあかんと説く場面、には旦那の人に対する暖かさが滲み出ていてほろっとした。

時々踊りは見事だったとか嫌味を忘れなかったり、帳面の不正がないか調べた所はさすがに上に立つものだ。

ある程度人生経験がいる話だ。米朝が語るからこその重みを感じた。

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